楽天VTはお勧め投資信託だが3重課税で見えない”コスト”に要注意

投資を始めたばかりの知り合いに「何を買えば良いか?」と聞かれたら、私は楽天・全世界株式インデックス・ファンド(通称楽天VT)を勧めます。

バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(通称VT)を買い付けるだけというシンプルな設計ですが、一本の投資信託で全世界株式に分散投資ができてリバランスは不要。信託報酬はたったの0.2296%ですからね。大きく勝つこともないけど、大きく負けることもない。気軽に無難な投資をしたい人にはベストな選択ではないでしょうか。

ただ、知らないと後で後悔するのが楽天VTの3重課税問題。楽天VTは米国籍ETFを買い付けるという設計上、他の投資信託と比較して税制面ではデメリットを抱えていると言えます。

そもそもVTが抱える3重課税問題

楽天VTの前に、まずはVTの3重課税問題について見ていきます。

VTに限らず、米国籍ETFを通じて全世界に投資をする場合、分配金に対して「現地国→米国→日本」の3ヶ所で課税されてしまいます。これが3重課税問題です。

VTの場合、具体的には次の順番で分配金に対して課税されます。

  1. VTファンド内において現地国に税金を支払う
  2. VTは米国株扱いなので米国に税金を支払う
  3. 最後に日本で税金を支払う

楽天VTは米国籍ETFであるVTを買い付ける投資信託なので、VTの3重課税問題をほぼそのまま引き継ぐことになります。

ただ、厳密に言えば楽天VTとVT直接購入では以下の2点で違いがあります。

VT直接購入では確定申告をすれば米国での課税分はほぼ取り戻せる。一方、楽天VTでは米国での課税分もファンド内での支払いになるので確定申告で取り戻すことはできない。
VT直接購入ではETFの性質上、分配金は”勝手に”出てしまうので分配金が出る度に日本国内で課税されるため複利運用の面で不利。一方、楽天VTでは「現地国→米国」で2重課税後、分配金がファンド内で再投資され基準価格に反映される。日本国内での課税は売却時まで繰り延べられるので、複利効果が働いて有利。

VT=米国株+米国外株

ところで、VTの構成比率は米国株が約55%・米国外株が約45%になってます。

3重課税問題をもっと詳しく理解するためには、米国株と米国外株で課税の仕組みが違うので、それぞれを分けて考える必要があります。

米国株部分への課税

楽天VTでは「米国→日本」の順番で2重課税になりますが、これは海外ETFを経由しない通常の投資信託でも同じことです。

米国株部分については楽天VTが特に不利なわけではないので、あまり気にする必要はありません。

米国外株部分への課税

楽天VTでは「現地国→米国→日本」の順番で3重課税になります。一方、海外ETFを経由しない通常の投資信託の場合「現地国→日本」の2重課税で済みます。

楽天VTでは米国課税分(棒グラフのオレンジの部分)だけ余計な税金を支払うことになります。分配金の手取り(青の部分)が楽天VTでは通常の投信よりも少なっていることが分かりますね。

では、実際にどれだけ余分な税金を払うことになるのでしょうか?

以下の条件で簡易的に計算してみます。(大雑把ですが、わりと実情に即した条件ではあります。)

  • 分配金利率は2.2%
  • 現地国の税率は10%
  • 米国での税率は10%
  • 日本での税率は20%

現地国の課税後にファンド内に残る分配金は、分配金利率ー(分配金利率×米国外株比率×現地国税率)ですので、

2.2%-(2.2%×45%×10%)≒2.1%

この2.1%に対して米国で課税されます。米国での課税額は、2.1%×米国外株比率×米国税率ですので、

2.1%×45%×10%≒0.09%

楽天VTでは3重課税の問題で、米国外株の米国課税分=約0.09%だけ余分に税金を払うことになる

楽天VTにかかる真の”見なしコスト”

楽天VTの信託報酬はたったの0.2296%で、似たような投資信託と比べても超低コストです。しかし、税制上約0.09%分のデメリットを抱えているため、他の投資信託の信託報酬と比較するときには、楽天VTの信託報酬に0.1%程度上乗せしてから比較すると良いかもしれません。

3重課税も考慮に入れた楽天VTの”見なしコスト”は0.2296%+0.1%=約0.3296%。

3重課税というとなんだか損した気分で嫌ですが、それでも楽天VTが超低コストで全世界株式に手軽に投資できる優れた商品であることに変わりはありません。

楽天VTの3重課税が気になる場合の代替案

どうしても楽天VTの3重課税が気になる場合は、投資信託を自分で組み合わせて自作版VTを作ってしまう手もあります。

お勧めは「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」と「ニッセイTOPIXインデックスファンド」を組み合わせる方法です。

楽天VTにおける日本の構成比率は8.2%なので「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」を92%「ニッセイTOPIXインデックスファンド」を8%の割合で保有すれば、なんちゃって楽天VTの出き上がりです。

信託報酬は、eMAXIS Slim(0.15336%)×92%+ニッセイTOPIXインデックスファンド(0.17172%)×8%=0.15483%。本家楽天VTよりも安く仕上がります。

また、「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」は海外ETFを介さずにマザーファンドを通じて直接海外株を買い付ける形式をとっているので、「現地国→日本」の2重課税で済みます。

欠点は2つ。

1つ目は、楽天VTのベンチマークが「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース)」なのに対して、「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」のベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本、円換算ベース)」なので、値動きに違いがあることです。

そして2つ目は、自分でリバランスしなければいけないことです。