「ドルコスト平均法は優れた投資法」にありがちな4つの勘違い

ドルコスト平均法は”リスク”を抑制し、平均購入単価を下げる”優れた”投資法である」

投資未経験者に金融商品を勧めるときの常套句として、多くのセールスマンが口にするこの言葉。私も投資を始めたころは、ドルコスト平均法こそがベストな方法だと信じて疑いませんでした。

でも最近になって、ドルコスト平均法について色々と誤解をしていたってことに気付いたんです。ドルコスト平均法って本当にベストな選択なんでしょうか?

「平均購入単価を下げる」の勘違い

「ドルコスト平均法は、一定金額ずつを購入することで価格が高い時には少なく、価格が安い時には多く購入することになるので、平均購入単価を抑えることができる」

一般的にはそう説明されることが多いですが、本当にそうでしょうか?

「ドルコスト平均法は平均購入単価の観点で有利でも不利でもない」

それが私の考えです。ドルコスト平均法と一括購入のどちらが有利なのかは結局のところ相場次第だからです。

例として、手元にある9万円を使ってある金融商品を一括購入した場合と、1万円ずつ計9回に分けてドルコスト平均法で購入した場合で、実際に比較してみました。

一括購入よりも有利なパターン

相場パターン①:ボックス相場のとき

 平均購入単価評価損益
ドルコスト平均法871円+13,333円
一括購入1,000円0円
相場パターン②:下がって上がる相場のとき

 平均購入単価評価損益
ドルコスト平均法483円+96,230円
一括購入1,000円0円
相場パターン③:右肩下がりのとき

 平均購入単価評価損益
ドルコスト平均法497円-35,631円
一括購入1,000円-63,000円

一括購入よりも不利なパターン

相場パターン④:上がって下がる相場のとき

 平均購入単価評価損益
ドルコスト平均法1,296円-20,529円
一括購入1,000円0円
相場パターン⑤:右肩上がり相場のとき

 平均購入単価評価損益
ドルコスト平均法1,259円+38,655円
一括購入1,000円+72,000円

購入前からどの相場パターンになるかを正確に予測できるなら、そもそもドルコスト平均法を使うのではなく、相場の底で一括購入するのが一番良いはず。

たいていの人は、相場のパターンなんて読めないからドルコスト平均法を使って購入単価を均そうとするんです。でも、そこに矛盾が生じるわけです。どの相場パターンになるか予測ができない=ドルコスト平均法にとって有利な相場パターンになるか不利な相場パターンになるかは分からない、ということになります。

ドルコスト平均法は平均購入単価を「下げる」こともあるし「上げる」こともあるということです。

ただ、20年以上の長期投資をする場合、そもそもパターン①~④の相場を想定しているでしょうか?短期の値動きは読めないにしても、長期的には右肩上がりになる確率が高い資産に投資をするのが王道でしょう。

長期的には右肩上がりになると信じられるのであれば、単純に一括購入、あるいはせいぜい1・2年程度の期間を使ったドルコスト平均法でスピード感をもって買い付けてしまうという選択肢も検討する価値があるでしょう。

「”リスク”水準を下げる」の勘違い

「ドルコスト平均法は”リスク”を抑制し、安定して収益を得ることができる投資法である」

これも良く聞くセールス文句ですが、やはり多くの人に誤解されたまま言葉が独り歩きしているのではないでしょうか?

リスクの意味

そもそも「リスク水準を下げる」と言った場合、”リスク”とは何を意味するのか?

リスクとは、期待されるリターンからのズレのこと。例えば、期待リターン5%の金融商品を購入した場合、毎年安定的に5%ずつ利益を出してくれるわけではなく、ある年には+2%、次の年には+7%、次の年には-5%…、というように良くも悪くも期待リターンからのブレが生じます。このブレのことをリスクと呼ぶわけです。

ある商品で「期待リターン6%・リスク8%」という場合、リターンは約68%の確率で6%̟±8%の間、つまり-2%から14%の範囲内に収まること意味しています。

そして、一般的にリスクは金融商品を保有している時間が長くなれば長くなるほど大きくなります。例として、私も利用しているロボアドバイザーのウェルスナビのナビゲーション画面を紹介します。

点線が投資元本、白のラインが期待リターン、濃い青・薄い青がリスクを表しています。時間の経過とともに、青の幅(=リスク)が増えていることが分かります。

リスクは下がる…けどそれは当然

ある金融商品を一括購入する場合と、ドルコスト平均法を使って毎月1回=年間12回に分けて購入する場合では、金融商品を時間にさらす期間に違いがでます。

一括購入では投資期間中をフルに使って投資資金を時間にさらします。

一方でドルコスト平均法では、後の回に買い付けた資金ほど運用期間が短くなります。総体的に資金をさらす時間が短くなるのだから、ドルコスト平均法でリスク水準が下がるのは当たり前のことです。

運用機会を逸するとの見方もできる

更に、ドルコスト平均法では、リスク水準が下がるのと同時にリターンを得る機会も失っていることにも注目するべきです。

例えば、年5%の運用益が見込める金融商品を1月に1,200万円分一括買付した場合、年末には評価額が1,260万になることが期待されますが、毎月定額買付をした場合5%フルに運用できるのは初回に購入する100万円分だけ。12月に購入する100万円分には、5%÷12=0.4%の運用益しか期待できないことになります(だいぶ乱暴な計算ですが)。

手元にあらかじめ大口の資金がある場合、ドルコスト平均法を使ってわざわざ何年もかけて購入すると、運用効率を落としていると見みることもできるわけです。

リスク・リターンは投資商品に影響される

実際のところ、ドルコスト平均法だろうと一括購入だろうと、リスク8%の商品はリスク8%の商品でしかないのです。そして購入方法の違いは、平均購入単価と運用期間の違いでしかありません。

「長期積立投資向き」の勘違い

「ドルコスト平均法は相場を気にせず長期でコツコツ積立投資をするのにベストな方法だ」

とよく言われます。

「むしろ長期になるほどドルコスト平均法ではケアが必要」

というのが私の見解です。それは、長期になれば長期になるほど直近の買付額が平均購入単価に与える影響が薄れていき、一括購入との差が無くなっていくからです。

例えば、1万円ずつ定期的に1つの投資信託を買い続ける場合、2回目の買付は平均購入単価に50%の影響力を持っていますが、241回目(20年後)の買付は0.4%(1万÷241万)の影響力しか持っていないことになります。

ドルコスト平均法を始めて間もない頃の様子が下の票です。2回目の買付では平均購入単価が1,000円から667円まで大きく下がることで、ドルコスト平均法の利点がうまく生かされています。

一方で積立20年後、241回目の買付では平均購入単価は996円にしかならず、一括購入との差はほんのわずかです。

このように、投資資金が大きな塊になればなるほど、投資の成否を分けるのは購入タイミングではなく「どの商品を・どの割合で・どれぐらいの期間保有するか」であるはずです。

「国際分散投資+ドルコスト平均法がベスト」の勘違い

「ドルコスト平均法による国際分散積立投資で有利に資産形成をしましょう」

これも積立NISAのパンフレット等で良くみるセールスマン文句です。ここにも誤解が生じているように思えます。

分散投資は確かにリスク水準を下げるので、資産運用の安定性を高める上で有効です。全世界株+全世界債権に積立投資をして世界経済成長の平均を享受する、という考え方も大好きです。

どころが、本来ドルコスト平均法とリスク水準の低下を狙った国際分散投資は相性が悪いはずです

ドルコスト平均法では一般的に値動きの激しい資産に投資をした方が有利だと言われています。実際に、価格変動が小さい商品と大きい商品を1万円ずつ、合計9万円購入した場合に平均購入単価がどうなるか見てみましょう。

500円~1500円のレンジ相場(価格変動が小さい場合)
 平均購入単価評価損益
ドルコスト平均法871円+13,333円
200円~1800円のレンジ相場(価格変動が大きい場合)
 平均購入単価評価損益
ドルコスト平均法559円+71,111円

本当の効果は気休めではないか?

ドルコスト平均法の一番の利点は、下げ相場や一時的な暴落にも動揺することなく、淡々と投資を続けられる、ということではないでしょうか。実際のところ、ドルコスト平均法は有利でも不利でもないのです。

それでもドルコスト平均法による積立投資は続けたい

ドルコスト平均法は特別に有利でも不利でもない。それを承知の上で、ドルコスト平均法による積立投資&年数回のリバランスによるポートフォリオ管理は続けていこうと思います。

現役世代にとって「毎月入る給料から少しずつ投資をする」というスタイルが一番分かりやすく便利な投資手法であることに変わりはありません。